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成分研究

IgG抗体高含有濃縮乳清タンパク

概要

昔から日本では母乳で育った子供は、丈夫で病気にかかりにくいと言われてきました。これは出産後の母乳に多く含まれる免疫抗体が、赤ちゃんの免疫力をはぐくみ、外部からの感染に抵抗力をつけるためです。その後、私達は成長の過程で様々な病原菌に出会う事で、それらに対する抗体を獲得していきます。女性は身ごもると、分娩までに獲得した感染因子にたいする抗体を自分の赤ちゃんへ与える仕組みを持っています。妊娠中には胎盤を通過してIgG抗体が胎児へと移行し、出産直後は初乳(赤ちゃんが生まれてすぐ後にでる初期の母乳)中に分泌型IgAという抗体も多く分泌され、小さな命を感染症から守るお手伝いをしています。

こうした作用を、赤ちゃんだけでなく免疫が低下した大人にも利用できないものかという願いをもとに研究を進めた結果、IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクが誕生しました。IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクは豊富な生乳を原料として生成しており、IgGやs-IgA、ラクトフェリンを含有しています。

主な成分

  • 免疫グロブリンG(IgG)
  • 分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)
  • ラクトフェリン

作業機序と期待される効果

腸内フローラのバランス調整

私達の腸内には総数100兆個にも及ぶ多様な細菌がバランスよく生息しており小宇宙のような生態系「腸内細菌叢(そう)」を作り上げています。顕微鏡で覗いてみると、これらはまるでお花畑のようにも見える事から「腸内フローラ」とも呼ばれるようになりました。腸内フローラを形成している腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに大きく分類されます。もし何らかの原因で、腸内細菌のバランスが崩れ腸内の悪玉菌が優勢になると、悪玉菌がつくりだす有害物質が増えてしまい、便秘や下痢、肌荒れやアレルギーなどを引き起こす原因になりかねません。腸内フローラの乱れはそれ以外にも、糖尿病や肥満、肌のシワ、性格にまで影響を及ぼしていて私達の健康を左右していることが過去の研究で知られています。IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクは腸内フローラのバランスを整え、正常に保つことで腸内環境を整えるお手伝いをしています。

感染症予防

IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクに高用量含有されるIgG抗体は、腸において様々な病原菌の腸管への接着を抑制する働きにより、食物媒介感染症からの保護作用や、部分的には気道感染に対しても保護効果がある事が示唆されています。IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクの感染症に対する保護効果が順天堂大学医学部によって研究されており、IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクを与えたマウスは、対照群と比較して腸管出血性大腸菌 O157:H7、サルモネラ菌(s.Enteritidis)に対する抵抗性を示しています。また経鼻的にM.avium(非結核性抗酸菌)をマウスに感染させた後にIgG抗体高含有濃縮乳清タンパクを与えたマウスは、対照群と比較して肺中の細菌数が有意に少なかったという結果が出ています。

炎症性腸疾患の予防

いわゆる抗体といえば病原体などと闘う「武器」のイメージですが、むしろ有益な細菌を保護する働きを持つものもあります。分泌型IgAと呼ばれる抗体は、IgA抗体が2つ付いた2量体の事で、粘膜ではIgA抗体の殆どがこの形で存在しています。このs-IgAは、腸内において攻撃するためのみではなく、有益な腸内細菌を保護し、腸に定住させる働きがあると言われており、それが炎症性腸疾患の発症を予防することに寄与していると言われています。

免疫力サポート

免疫というものを、敵を体内に侵入させない粘膜免疫、そして侵入してしまった敵と戦う全身免疫という分類でみると、IgGは全身免疫の代表、そしてs-IgAは粘膜免疫の代表といえます。もしもこのs-IgAが低下すると容易に病原菌が体内に侵入してしまうため、病気に罹りやすくなってしまいます。IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクにはIgGのみならず、s-IgAや、赤いタンパクともいわれるラクトフェリンが含有されています。

アレルギー予防

腸には全身の免疫細胞の約60~70%が存在する事が知られています。腸はさまざまな有害物質や病原菌などが侵入して場所であるため、特に多くのリンパ球が集まっています。そして有害物質が入ってくると、粘膜免疫の代表であるs-IgAを作りだす機能が働き、外敵から私たちを防御します。この時に腸内フローラが乱れていると、s-IgAの生産がうまくいかない事もいわれています。s-IgAは、腸の炎症を鎮める作用やアレルギーにも関係している事がわかっています。

研究情報

IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクのSARS-CoV-2への働き

SARS-CoV-2(ウイルス名:コロナウイルス、病名はCOVID-19)スパイクタンパク質(S)およびヌクレオキャプシドタンパク質(N)に対する抗体がIgG抗体高含有濃縮乳清タンパクに含まれていることが明らかになり、SARS-CoV-2を中和する可能性が示唆されました。
Presence of antibodies against SARS-CoV-2 spike protein in bovine whey IgG enriched fraction

IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクの細菌・真菌に対する免疫活性

広大な放牧地で自由に育てられた乳牛は、自然な環境で多種の病原菌にさらされることによって病原菌に対する抗体を産生することができます。

2001年にFood Research International(フードリサーチインターナショナル)に掲載された論文発表によると、ニュージーランドの抗体高含有ミルクは19の病原菌(細菌および真菌)に対する免疫活性を有していることが分かっています。2019年7月の『Food Science & Nutrition』では、今や日本人の死因3位である肺炎の原因でもあり年々増えつつある非定型抗酸菌症に対する効果も発表されています。

20種類の細菌・真菌に対するIgG抗体高含有濃縮乳清タンパク
病原菌の学名 日本名 感染による病気の内容
Bacillus cereus セレウス菌 食中毒による嘔吐、下痢、腹痛
Campylobacter jejuni カンピロバクター・ジェジュニー 急性胃腸炎
Candid albicans カンジダ・アルビカンス 粘膜感染症、アトピー性皮膚炎
Escherichia coli 大腸菌群 食中毒、尿路感染症
E.coli O157:H7 腸管出血性大腸菌O157:H7 食中毒、出血性大腸炎、溶血性尿毒症
Helycobacter pylori ヘリコバクター・ピロリ菌 胃潰瘍、胃癌
Klebsiella pneumoniae 肺炎桿菌 肺炎
Listeria monocytogenes リステリア・モノサイトゲネス 脳炎、関節炎
Propionibacterium acnes プロピオニバクテリウム・アクネス ニキビ
Salmonella enteritidis (LPS) 腸炎菌 食中毒
Salmonella typhimurium ネズミチフス菌 食中毒
Staphylococcus epidermidis 表皮ブドウ球菌 日和見感染、化膿性炎症
Streptococcus agalactiae 連鎖球菌 乳腺炎、尿路感染症
Streptococcus mutans ミュータンス菌 虫歯
Streptococcus pneumoniae 肺炎連鎖球菌 乳腺炎、尿路感染症
Streptococcus pyogenes 化膿連鎖球菌
Yersinia enterocolitica 腸炎エルシニア 腸炎、食中毒、関節炎
Heamophilus influenzae インフルエンザ菌 気管支炎
Staphylococcus aureus 黄色ブドウ球菌 化膿性炎症、関節リウマチ、食中毒
Mycobacterium-avium complex 抗酸菌(マック菌) 非結核性抗酸菌症

副作用・ご注意

IgG抗体高含有濃縮乳清タンパクは生乳を原料としています。牛乳アレルギーをお持ちの方や先天性乳糖不耐症の方は、ご使用前に医師・薬剤師にご相談ください。

参考文献

  1. Presence of antibodies against SARS-CoV-2 spike protein in bovine whey IgG enriched fraction
  2. Enriched bovine IgG fraction prevents infections with Enterohaemorrhagic Escherichia coli O157:H7, Salmonella enterica serovar Enteritidis, and Mycobacterium avium
  3. Use of immunoglobulin enriched bovine colostrum against oral challenge with enterohaemorrhagic Escherichia coli O157:H7 in mice
  4. A comparison of IgG and IgG1 activity in an early milk concentrate from non-immunised cows and a milk from hyperimmunised animals
  5. 免疫グロブリンGを含む濃縮乳清蛋白の犬・猫に対する有用性
  6. 免疫グロブリンGを含む濃縮乳清蛋白のエキゾチックアニマルに対する有用性について
  7. Stability of bovine immunoglobulins to thermal treatment and processing